氷河期を迎えるIT – 進化を遂げないシステムは死に絶える

昨年末のお礼エントリーを書いて以来、会社の方も新しいメンバーを沢山迎えたり、移転を実施したりといろいろと動きがあり、ドタバタしているうちにこのブログもだいぶ放置してしまいました。

近況については改めてまた投稿したいと思いますが、取り急ぎ今日は、自由なテーマで書いてよろしい、ということで電経新聞さんにてコラムの月次連載枠を頂いたのと、そのコラムのブログへの転載についても認めて頂いたこともあり、最近日々つらつらと思っていることを書かせて頂いたコラム原稿を、こちらのブログにもエントリーさせて頂きます(今後も掲載後に転載させて頂きたいと思います)。

昨年11月に増資を行って、会社の事業や推進体制について大分見直しを行ったのも、背景には今回のブログエントリーのような危機感があったからです。

ここ1年、ことあるごとにお会いする人には日本が次のステージに進めるかどうかは「IT敗戦国」であることを認められるかどうかが重要だ、という話をお話をさせて頂いています。

第2次大戦後、日本は「負け」を認めることで冷静に何が駄目だったのかを考え、維新後と同じように西欧列強の分析から新しい枠組みを作ってきましたが、今のIT産業も同じような状況なのではないかと思います。

当社はクラウドに関連したサービス事業を行っていますが、事業を進めれば進めるほど、今クラウドという世界で起きている技術革新は、1990年から始まるWebを基盤とした10年以上に渡る産業革新の中で起きているものであり、Webサービスで1兆円を超える売上を誇るような企業を多数生み出しえなかった日本が圧倒的に差をつけられてしまっている分野であると実感せずにはいられないのです。

個別の技術や理論についてはそれでも日本は頑張っていると思いますが、それを産業として展開出来るだけの市場を持ち得なかったことが、結局技術の成長にブレーキをかけてしまっています。

日本の戦後史は、日本の復興の足がかりが、そうした巨人に真っ向から立ち向かうのではなく、敢えてその基盤、巨人の手のひらに乗ってみた上で、新しい地平を探すことを示唆しているのではないかと思うのです。

クラウドの次の変革がまだどこにあるのかは誰も見えていない状況だと思いますが、ITで根本から産業を変えていかない限り、常に最初に新しい地平にたどり着くのは私達ではないと思わざるを得ないのが、私がインターネットビジネスの世界で生きてきた10余年の教訓だと思っています。

今のIT産業は、新たな環境激変期の真っ只中にありますが、氷河期に生き残った生物が次の世界で生存圏を大きく広げたように、この激変期に適応してサバイブすることこそが、次の時代の事業拡大に繋がる鍵なのではないでしょうか。

以下は電経新聞さんに掲載頂いた原稿です。よろしければご笑覧下さい。

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(電経新聞 2011.6.6号のコラムから)

2010年からの数年は、後から振り返ってみれば、ITの環境激変期として捉えられる時代になるかもしれない。当社はワークプレースから普段の生活まで、様々なシーンでITを活用したサービスをデザイン、開発しており、その過程でユーザーの行動観察調査を行っているが、ここ1~2年でその行動に変化が見られるようになってきた。

そのユーザーの行動変化の起点となっているのがIT環境の大変化である。携帯はフィーチャーフォンからスマートフォンへ、PCはタブレットをはじめとしたシンクライアントへと変化。またそれに合わせてアプリケーション環境も手元のPCで動作するものからクラウドへと変化している。

こうした環境変化は個人にはとどまらない。かねてよりインターネットの世界では、一般ユーザーの方が企業よりも良いITを使っているという認識があったが、「コンシューマライゼーション」と呼ばれるように、タブレットやソーシャルメディア技術など、一般の人に訪れた大きなITの変化は企業にも及び、企業内でも積極的にそうした技術やサービスが活用されるようになってきている。

以前さる企業のトップに聞いた話だが、米国ではクラウドなど新しいITを活用して生産性の向上とコストダウンを図ることを株主が経営陣に迫るのだという。日本でも近い将来、こうした光景が各所で見られるようになるのではないか。

法人マーケットにおいてコンシューマライゼーションの牽引者の代表格とされるGoogleは、これまでのネットワークコンピューティングの概念を大きく見直し、計算資源を余す所無く効率的に利用するための技術を「クラウド」という形で体現、これまででは想像も出来ないような巨大な計算資源を一瞬とはいえ、個人が利用出来るような環境を作り上げた。

これにより、10年前には想像もつかなかったようなインターネットの利用が安価に出来るようになっている。例えば、Googleの音声認識は非常に高精度だが、これはインターネット上で収集した膨大な単語データ等、インターネットのリソースを余す所なく活用することによって実現されている。

リーマンショックに続く今回の震災により、企業も個人もITの利用にタテマエを言っていられなくなりつつあるのが現状だろう。コスト圧力がますます高まりつつある中ではユーザーも変わる。そうした中でタテマエを貫き続けることの難しさに既に多くの人が気づきつつあることが、スマートフォンやクラウドの利用を後押ししているのではないか。

そうした中でサービス提供者がタテマエを叫び続けることほど虚しいことはない。今ITサービスの提供者に求められるのは、ユーザーの置かれた環境を見つめつつ、これまでのITの常識を見直すことだろう。

今はその中から新しい進化の方向を見出せないプレイヤーは退場を余儀なくされる、まさしく「IT氷河期」なのではないかと思う。