ひょんなことからインプレスさんのサイトを見ていたところ、故・山下憲治さんのページに行き当たりました。僕は直接の面識は全くなかったのですが(非常に残念ですが)、日本で有料のメール媒体を立ち上げられた方として、また多くのパソコン・インターネット初心者に福音だった「できるシリーズ」の企画担当者として、知人やSurvey ML等の間で話題の方だったことを今でも覚えています。インプレスさんではホームページの会社説明ページに“特別功労者”としてサイトに今でも山下さんの個人ページへのリンクを掲載していますが、こちらの個人ページにはかつて山下さんが存命の際に書かれていらっしゃったメモランダムが残っていて、山下さんの当時の様々な事象に端を発する、今でも古くならないシャープな考察を探ることができます。
編集者としての心構えやスタンス、仕事の仕方など、様々な話題を読ませて頂くことができ、その一つ一つにメディア事業に新しく入った私は感心してしまうのですが、最近の自分が直面する問題を省みるに印象に残ったのが、インターネットウォッチのコラムに書かれていた「広告モデルでの運用は可能か(97/12/16)」でした。この記事の書かれた日時に是非着目して頂きたいのですが、ここで書かれているような傾向は未だにあまり変わっていないのが実情だと思っています。回線コストなど、サービス運用に関わるコストは確かに下がりつつありますが、単価は輪をかけて下がっていることは業界の多くの方がご存知だと思いますし、ビジネスの構造もほとんど変わっていないのではないかと思います。
特に僕も問題だと思うのが:
雑誌の広告の場合、人気のある雑誌であればあるほど広告は入ってくる。なぜなら、広告の表示回数は雑誌の部数であり、同じ広告を打つのなら部数が多い雑誌に打った方が「一部当たりの単価」が下がるからだ。
しかし、Web広告の場合通常ページビュー単価という方式を取る。これは、ページのアクセス数を切り売りして、「広告を××回表示するので、○○円払ってください」というシステムだ。広告主から見れば、そのWebが人気であろうとなかろうと「見る人の数は変わらない」し「ビュー当たりの単価も変わらない」のである。また、期間料金で最低ページビュー保証という方法もある。この場合は人気サイトの方が一見単価が安くなるように思えるが、実は広告主が集まれば、N分の一になって行くわけで、結局は最低ページビュー保証のページビューでの単価に近づくことになる。
つまり、コンテンツの人気と広告の集まり具合の相関関係がWeb広告の場合弱いのだ。これを考えると、人気があればあるほど、売れないページビューが増える可能性が大きくなる。
この部分です。いいものを作ったからといって必ずしも高い経済価値がつかないのが現行のWeb媒体のビジネスシステムで、これはメディアのクオリティを維持することを考えると致命的なのではないかと。実際、Web媒体ではPVの粗製濫造が起きていて、規模は大きいけど中身は薄い、というものが増えてきているような気がします。長い目で見れば読者の信頼も失うし、そもそも若手にとって魅力的な職種でもなくなってしまうだろうし(実際にその傾向は見え隠れしている)、将来への投資余地も失わせる、という意味では、もっとWebメディア(特に自社でコンテンツを作成しているところ)は真剣にこの課題に取り組むべきなのではないかと思っています。
僕がWebメディアのビジネスを任された際に、僕が代表として在任中にひとつの結論を見出したいと思った課題の1つはここで、Webでも高いクオリティのものを出しつつ、それによって高い収益性を上げるモデルを開発する、といったことを何とかできないかと思っています(現在でも具体的に試行錯誤してはいますが、まだ結果として十分に何かが出ている状態ではないのです)。これを成功させることで、良い読者層に継続的に支持され、若い人にも魅力的な職種となり、ライターさんにも生活を圧迫しない合理的な範囲でじっくりと仕事に当たって頂くことができるようになり、結果としてWebメディア業界を働き場として志向する人が増えればいいなー、と思っている今日この頃です。
山下さんのサイトは今でも仕事のヒントになる思考が様々残されているので、是非もっといろんな方に読んで頂きたいと思います(ページをしっかりと守っていらっしゃるインプレスさんは本当にリスペクトです)。