とにかく感動すること・好きなことを探そう

 あまり知られてはいないのだけれども、実は私は日本電気さんのPC6001mkII用のユーカラJJというワープロソフトのイメージキャラクタの名付け親だったりします。当時はまだ小学校の高学年になるかならないかぐらいでしたが、従姉妹の家で触ったPC8001に感動し、当時パピコンと呼ばれていたPC6001を買った後のことです。オタクの先駆けと言えるかもしれませんが、かなりパソコンにはまっていました。

 またこれも実はあまり知られていないかもしれませんが、前の会社を作る上でいろいろと支えて下さったネオテニーの伊藤さんに会ったきっかけも、そもそもはDOOMというネットゲームのはしりの大会で、私が優勝したことにあります。これも、ゲームがとにかく好きでやっていたから起こった偶然と言えるかもしれません(橋本大也さんだったかもしれませんが「わらしべ長者(笑)」と言われたこともありました)。

 最近若い人と会う機会が少し増えましたが、少しこの「感動する」とか、「侵食も忘れて好きになる」というほど心が動かされることがあまりない人が多いようです。宮台さんの「終わりなき日常」ではありませんが、周囲からの刺激が少ないことがそもそもの原因かもしれません。

 確かに僕が学生だった頃に感じたネットの衝撃のようなものは今はないのかもしれませんが、それでも世の中はいろんなカタチに毎日変わり続けているので、積極的にいろんなものを見聞きしていけば、自ずと感動する機会も増えてきます。自分をそこまでドライブするのは確かに結構大変です。

 しかし、僕は今の時代こそこうした感動に裏打ちされた「感性」がとても大事だと思っています。以前某編集者の方と、人間として「1%の感性と99%の論理」で物事を見る人と、「99%の感性と1%の論理」で物事を見る人、どちらの方が可能性があるかということについてとめどない議論をしたことがありましたが、お互い後者の方が人間としては可能性があるという結論に達しました。

 論理構築力は年を取ってからでもある程度は磨けますが、ものを見る目、感性というものは時間をたっぷり使える若い時期でないと磨けません。ものを見る目のある人は、そもそも毎日の生活の中に「気づき」がありますが、理屈が先行する人にはこれがない。

 私も30歳を過ぎて何を言うやら、という感じではありますが、素直に感動することが減ってきました(でもその分、意外なことに出会った時の喜びは学生の時以上ですが)。とにかく今の新入社員や学生の人達には、自分にとって大切と思えることに積極的に時間を費やして欲しいと思っています。

故・山下さんの足跡を辿る

 ひょんなことからインプレスさんのサイトを見ていたところ、故・山下憲治さんのページに行き当たりました。僕は直接の面識は全くなかったのですが(非常に残念ですが)、日本で有料のメール媒体を立ち上げられた方として、また多くのパソコン・インターネット初心者に福音だった「できるシリーズ」の企画担当者として、知人やSurvey ML等の間で話題の方だったことを今でも覚えています。インプレスさんではホームページの会社説明ページに“特別功労者”としてサイトに今でも山下さんの個人ページへのリンクを掲載していますが、こちらの個人ページにはかつて山下さんが存命の際に書かれていらっしゃったメモランダムが残っていて、山下さんの当時の様々な事象に端を発する、今でも古くならないシャープな考察を探ることができます。

 編集者としての心構えやスタンス、仕事の仕方など、様々な話題を読ませて頂くことができ、その一つ一つにメディア事業に新しく入った私は感心してしまうのですが、最近の自分が直面する問題を省みるに印象に残ったのが、インターネットウォッチのコラムに書かれていた「広告モデルでの運用は可能か(97/12/16)」でした。この記事の書かれた日時に是非着目して頂きたいのですが、ここで書かれているような傾向は未だにあまり変わっていないのが実情だと思っています。回線コストなど、サービス運用に関わるコストは確かに下がりつつありますが、単価は輪をかけて下がっていることは業界の多くの方がご存知だと思いますし、ビジネスの構造もほとんど変わっていないのではないかと思います。

 特に僕も問題だと思うのが:

 雑誌の広告の場合、人気のある雑誌であればあるほど広告は入ってくる。なぜなら、広告の表示回数は雑誌の部数であり、同じ広告を打つのなら部数が多い雑誌に打った方が「一部当たりの単価」が下がるからだ。

 しかし、Web広告の場合通常ページビュー単価という方式を取る。これは、ページのアクセス数を切り売りして、「広告を××回表示するので、○○円払ってください」というシステムだ。広告主から見れば、そのWebが人気であろうとなかろうと「見る人の数は変わらない」し「ビュー当たりの単価も変わらない」のである。また、期間料金で最低ページビュー保証という方法もある。この場合は人気サイトの方が一見単価が安くなるように思えるが、実は広告主が集まれば、N分の一になって行くわけで、結局は最低ページビュー保証のページビューでの単価に近づくことになる。

 つまり、コンテンツの人気と広告の集まり具合の相関関係がWeb広告の場合弱いのだ。これを考えると、人気があればあるほど、売れないページビューが増える可能性が大きくなる。

 この部分です。いいものを作ったからといって必ずしも高い経済価値がつかないのが現行のWeb媒体のビジネスシステムで、これはメディアのクオリティを維持することを考えると致命的なのではないかと。実際、Web媒体ではPVの粗製濫造が起きていて、規模は大きいけど中身は薄い、というものが増えてきているような気がします。長い目で見れば読者の信頼も失うし、そもそも若手にとって魅力的な職種でもなくなってしまうだろうし(実際にその傾向は見え隠れしている)、将来への投資余地も失わせる、という意味では、もっとWebメディア(特に自社でコンテンツを作成しているところ)は真剣にこの課題に取り組むべきなのではないかと思っています。

 僕がWebメディアのビジネスを任された際に、僕が代表として在任中にひとつの結論を見出したいと思った課題の1つはここで、Webでも高いクオリティのものを出しつつ、それによって高い収益性を上げるモデルを開発する、といったことを何とかできないかと思っています(現在でも具体的に試行錯誤してはいますが、まだ結果として十分に何かが出ている状態ではないのです)。これを成功させることで、良い読者層に継続的に支持され、若い人にも魅力的な職種となり、ライターさんにも生活を圧迫しない合理的な範囲でじっくりと仕事に当たって頂くことができるようになり、結果としてWebメディア業界を働き場として志向する人が増えればいいなー、と思っている今日この頃です。

 山下さんのサイトは今でも仕事のヒントになる思考が様々残されているので、是非もっといろんな方に読んで頂きたいと思います(ページをしっかりと守っていらっしゃるインプレスさんは本当にリスペクトです)。

備忘録7月末-8/4

■ Tower Record 伏谷さん・谷河さん、digitiminimi 竹中さんご挨拶

 昨年の暮れに会社の様々なステータスが変わったため、仕事上いろいろとお付き合いがありながらも不義理を働いていた方々に、弊社MS部マネージャーのおかげで私の仕事が少し楽になったところでご挨拶に行ってきました。

 タワーさんの方は相変わらず順調な感じで、近年の E-Commerce の動向や CD の売上動向などについてざっくばらんに話してきました。Webサービスを使っていろいろと面白い戦略が練られるのではないかと、陳腐な提言をしてみました(笑)。

 タワーレコードは昔から、企業スタンスとしてリスナーにオープンなスタンスを築いているように思われるので、Webでも同じスタンスをより推し進めれば結構上手くいくかも?と思っています。

 竹中さんの方は、相変わらずさすがだなぁと思う視点でいろんなお話が出来ました。特に、MT のコメントなどフィードバック機能がタコツボ型コミュニティを形成しやすい点に関して、いくつかのソリューションがあるのではないか?という話はさすが大御所(笑)、という感じでした。ping や TrackBack とか、まだコミュニケーションシステムとしては洗練できるのではないか?と。

 今でもかなりお忙しいようですが、今後のご活動に期待しています:-)

■ マトリックス・リローデッドを漸く見る

 現在夏休みですが、真昼間から映画を見るという贅沢をしてみました。時節としてはもうかなり遅いんでしょうが、六本木ヒルズもまだ行っていないし、丸ビルも漸くこの間取材でお邪魔したような感じで、近年人ごみが苦手な私としてはガラガラのこの時期に行ったのは正解でした。

 内容はというと、次回へ続くという尻切れトンボな感じでコメントしにくいところではあるんですが、ストーリーは標準レベル、映像表現は前作と同じく美しい、という感じでしょうか。必見という感じではないですが、一流の娯楽作品として十分に楽しむことが出来ると思います(米映画はそれが大事だと思っています)。

 映画で卒論書いたのに、ここ3~4年で見た映画の本数は恐らく10本を超えないという寂しい状況なので、今年は少し時間を作って積極的に見て回りたいと思っています(特に最近アニメーションは注目だと。ルイ・ヴィトンの新しいモノグラムをテーマにした、高城剛氏プロデュースによる村上隆さんのアニメビデオや、この間Blogにも書いた松本零士氏とDaft Punkのコラボレーションなどなど、新しい試みがあっていいムードです。こういうの見ると、クラブとか行きたくなるんだよなー。)

Roundup 7/21-7/25

■ 民主党・自由党と合併

 政権交代が日本で起きない理由をいろんな人に聞いていると「それは野党には任せられないから」という答えが返ってくることが多かった。それを聞いていつも思い出すのは、よく大企業なんかで聞かれる「若い人には任せられない」という台詞でした。

 若い人は多くの場合これを聞いて、「任せて欲しいのに」と思うことが多いのだけど、そういう人に限ってこの政局の話をしてみると、意外に現政党支持の人が多かったりするんですよね。根っこではやはりどこか保守的なところがあるのが、この国の国民性なのだと思います。

 まずは今までの状況から真剣に変わろうとすること、そのために思い切って今までとは反対側の政策や流れに身を投じてみることが、世の中を変える上では大事なのではないかと。この辺はまた後日。

 最後にフォローしておきたいのが自由党党首の小沢さんの決断。小沢さんが流れを作るために今回大きな決断をしたことは、新聞などで批判的な意見が多い反面、政治の膠着状態を破るための効果的な一手だったと思います。

■ Daft Punk “INTERSTELLA 5555″を見に行く

 フランスのテクノアーティスト”Daft Punk”と、日本を誇るSFアニメクリエイター、松本零士の合作によるミュージックビデオ長編”INTERSTELLA 5555″を見に行きました。Daft Punk の2ndアルバム発売後、4曲分のアニメがテレビでも個別に On Air されていましたが、実はアルバムに収録された14曲全てに渡って連続したアニメーションが作られていたというオチ。カンヌ映画祭でも上映され、上映後には拍手が鳴り止まなかったとのお話でした。

 上映初日ということもあり、松本零士氏の舞台挨拶もありました。「ミュージシャンはマジシャンです」という話をされていたのが印象的でしたが、僕から見ればアニメクリエイターもマジシャンだと思います。実際の作品は台詞がひとつもなく、約1時間ちょっとの間アルバムの曲が流れ続ける中、アニメのストーリーが進むというものですが、映画館で大音響の Daft Punk の曲を聴きつつ、映像が流れるのを見ていると「まだこういうことが出来るのだ」という感動で、思わず涙が出てきてしまうような作品でした。本当に表現の新しい可能性を見せてくれるいい作品には、人の心を根底から動かす力があると思います。

 そういった意味で思わず見終わった後に元気になってしまう、近年でも光るミュージシャンとアニメクリエイターのナイスなコラボレーションでした。リスペクトぉ!
(映画の方はシネマライズ渋谷にてレイトショーで上映中です。)

新オフィス

事業を始める前の新オフィスをちょっとだけ。
新しいオフィスには、新しい事業の息吹を感じることが出来て、ワクワクします。




内装は代々木上原のCafeで有名な FireKing Cafe の内装をやられた小林設計事務所さんです。多謝!

blog を通じて次のメディア産業を考えてみる

 昔からいつも何か書き始めると真っ先に悩むのが「書き出し」で、このblogもやはりいつものように書き出しに悩んでいましたが、本題で一杯書きたいことがあるのに書き出しから進めないのもしょうがないので、「書き出しに悩んでいる」ことを、漸く始めた Blog の書き出しに持ってきてみました。

 そもそも3年前に会社を作ってから今日までの僕のテーマは、「インターネットが実現する新しいメディアを考える」というところにありました。その問題意識から生まれたものが、現在会社で運営しているデジタルガジェットのレビューサイト、WAAGに集約されています(まだ出来ていないこともありますが)。ユーザによる自律的な編集システムの実現は、ある程度このサイトで成功した実感を得ています。

 ところで、最近環境が変わって、今度は既存のメディア産業の視点から媒体作りに取り組むことになり、「産業としてのメディア」の存続の可能性を考えることになりました。それでも私自身としては、やはりインターネットらしい媒体を追求していくということを考えており、このスタンスは WAAG の運営当初から変わっていないと思います。

 新しい媒体作りに当たって、今回僕が経営者としてテーマとして考えているのは次の3つです。

(1) 新しい収益モデルの確立
 媒体、特に出版では、ここ数十年広告事業モデルを続けて採用してきました。インターネットの普及後、そのモデルの存続は曲がり角に来ていると思っています。

 無限の広さを持つインターネット上で、多くの企業は媒体をとにかく拡張し、広告をより多く掲載しようとする一方、広告単価はひたすら下がり、それが製作コストの削減と、それに伴う媒体の質の低下を招き、結果として読者離れが起きるという負のスパイラルに苦しんでいます。

 blog のようなパーソナルパブリッシングを支援するシステムが普及してきている現在、質の低下は「信頼性」というメディア産業の根幹を危うくし、致命的な影響を与えかねません。

 ここ数年、新しいメディアに適合した新しいビジネスモデルが切望されてきましたが、僕も新しい事業の中で様々な挑戦を行っていくつもりです。

(2) ライター・編集のプロ育成環境の整備

 そもそもメディア産業に関しては、僕ははっきりいって素人で、これまでの仕組みをよくわかっていないところもあるため、こういったことを言うのはおこがましい気もしますが、ここ数年仕事の関係上いろんなIT系のライターの方や編集者の方とお話するにつけ、皆ライターや編集者の育成環境が整っていないことを重大な問題として考えられていることがわかりました。

 メディア事業は他の事業と比べても、より「人とノウハウ」がコアアセットになってくるだけに、この部分に関しては次世代のメディア産業に貢献出来る様々な施策を打ちたいと思っています。

(3) 新しいメディアづくり

 当然のことながら、インターネットで媒体を作るのであれば、そのメディアの特質を活かしたものを考えていくべきだと思っています。

 レビューサイトに代表される、読者とのコラボレーションの中で作るものや、はたまたこれまであまり取り扱われなかった、世界各地の情報の相互流通等、一歩一歩進めていきたいと思っています。

 この blog ではこの新しい媒体作りの試みの行方を中心に、日頃の活動の中でインスピレーションを受けた人やモノ、更に僕がぼちぼちと考えていること等に関して、独白にならないようお話していければと思っています。