IT化による人間力の低下を考える
年初よりかなり長い間 Blog での執筆をサボっていたために、当初は周囲の人からも「またサボってるじゃないですかー」と突っ込まれていたものが、近年ではとうとう何も言われなくなって、調度よく忘れられつつあるような状況になっていたのですが、久々にいい話をお聞きしたのでエントリーしてみました。
今日はあるフォーラムで、経営や事業の現場に積極的にITを取り入れており、メディアにもよく紹介されている企業の方が講演をされていました。その方の私見による自社の現在の問題点は、事業の各所に IT が取り入れられたことにより、むしろ人間力(企画力とか、直感的なもの、経験則的なものを指しています)が低下してしまっている、ということでした。
企業でITの導入が検討される多くの場合、その目的はいろんなSIerさんのTVCMのように、「生産性の向上」であることが多いわけです。この企業の今回のケースでは、ERP の導入により、売れ行き等のデータを即時に製品企画に反映させることが出来るようになり、当初は上手いこと「生産性の向上」という目的を達せられていたそうです。
しかし IT 導入後に入社してくるスタッフは、システムのロジックに縛られて成長してしまうため、逆にシステムの外にアイディアを巡らせることができない、更にいうと「やんちゃ」ができないスタッフに成長してしまい、会社として硬直化の兆しが出てきているのだとか。
背景には、ITの導入により様々なマーケティングデータを得られるようになったため、その膨大な情報を分析し、それを製品企画に反映させるために相当な労力を割いているということがあります。このため、現場を回って定性的なデータを得ることが出来ない、という状況が生まれてしまったと。
結果、マーケティングデータには精通しているけれども、製品それ自体をよく理解していなかったり、お客さんの「感覚」を掴めず、当たる製品を作れないスタッフになってしまう、ということです。
それでこの会社が今何をやっているかというと、今度は情報を「捨てる」努力をはじめたそうです。
ただ念のため書いておくと、この話の主眼はIT化の否定にあるのではなく、ITの活用がいかに難しいか、というところにあるわけです。そもそもの理想の業務体系にあわせたシステム設計の難しさだけでなく、いつそのシステムを捨てるのかといったことや、人がシステムのロジックに慣れてしまうリスクなど、様々な課題があるのだと実感した、ということが言いたかったのでした。
この話から僕が思い出したことには、往年のエンジニアやクリエイターが語る若手不足の話や、某氏が1年ほど前に触れられていた、マーケティング業界的には考現学が面白いといった話など様々ありますが、この辺はまたの機会に。
特に今回感じたのはIT活用の難しさと、IT化時代の組織設計や経営の難しさでした。「市場は生き物」とよく言いますが、これに長期的に対応できる系を作るのは実際骨の折れる仕事なんだと。

